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 認知症などにより意思判断能力が欠如した場合、不動産取引はできないのか? 私的自治の原則(個人の生活関係は、他者から干渉を受けず、自らの意思に基づいて自由に形成できる)により、契約の自由の原則(締結・相手方・内容・方法)が導き出されるが、無効となることがある。強行規定強行法規)違反・公序良俗違反(民法第90条) そして 民法3条の2 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。(明文化) 大判明治38.5.11意思能力を欠く人が行った行為は無効とされ、判例法理の基礎となってきた。 スーパーで野菜を買う意思表示と自宅を売却する意思表示は、意思表示であるが当然ながらレベルが違う。 不動産取引においても賃貸契約・サブリース契約・売買契約・等価交換契約・建築請負契約など契約内容のレベルは同じではない。難易度にも個別要素が多い。つまり取引(契約)の難易度+本人の症状の個別的要素を考慮する必要がある。契約から取引完了まで本人の意思能力が変化することもあるので、注意が必要である。                東京地裁平成17.9.29   意思能力とは自分の行為の結果を正しく認識し、これに基づいて正しく意思決定をする精神能力を有すると解すべきであり、意思能力があるかは、問題となる個々の法律行為ごとにその難易、重大性なども考慮して、行為の結果を正しく認識できていたかどうかということを中心に判断されるもの          <意思能力が認められるとして取引が有効とされた事例>                        東京地判平成21.2.25   アルツハイマーを発症していたが、他者とのコミュニケーション能力に格別の問題がなかった                                              東京地判平成8.11.27   多発性脳梗塞だが認知症状では常時判断能力を喪失していたとはいえず、売却代理権授与の内容も理解していた                                    東京地判平成21.11.10  老齢性認知症中等度から重度であったが、公証役場にて遺言内容変更する旨の遺言公正証書の作成、民事調停手続き、仲介業者と媒介契約を締結するなど、多方面から問題がなかった        <意思能力が認められないとして取引が無効とされた事例>                       東京地判平成20.12.24  老人性痴呆症(判決文)により売買金額が非常に低く、合理的判断を有する者の行動としては理解しがたい                                         東京地判平成21.10.29  アルツハイマー型認知症により、自宅売却したが代わりの住居が必要になるという問題にも思い至らない *このケースでは次に転売が既にされていたが、元の契約が無効のため転売契約も無効とされた                                                大阪高裁平成21.8.25   認知症で高齢者の判断能力が低い状態に乗じた、客観的な必要のない取引として公序良俗違反・・・・高齢者保護の観点  以上が判例の一部であるが、訴訟に至らない事例も数多くあると考えられる。 

親族のいない意思能力が不安な高齢者所有不動産取引には、取引業者はコンプライアンスを重視し、最後の砦の司法書士も意思確認を徹底すべきである。東京高判平成27.4.28 司法書士・不動産会社に対する損害賠償